てんのきのこと

八王子・高尾の自然豊かな場所で、シャンカシャンカという手回し焙煎の音。
この小さな音が、てんのきの最初の息づかいだった。
私はもともと“家族の暮らし”より“社会のシステム”に軸を置いていた。私の暮らしには、余白がなかった。ただ他人を意識した時間が流れ、たとえ前向きだとしても社会の一部として日々をこなすような感覚。
会社の肩書き、評価、立場。
それらを守ることが、自分の価値だと思い込んでいた。
転機になったのは、息子が6ヶ月の頃に決めた7ヶ月間の育児休職。2021年のこと。
通勤電車に乗らない朝、季節の移ろいを感じる時間、家族と向き合う日日。そのすべてが、私の“軸”をゆっくりと動かしていった。
「システム中心の暮らし」から
「自分中心の暮らし」へ。
私はようやく、自分の人生の主人公として生きるという感覚を取り戻した。
そして手回し焙煎の音とともに私たち家族の暮らしは少しずつ整い、やがて2022年に「珈琲てんのき」という名前を持つようになった。
焙煎を続けるうちに気づいたことがある。
焙煎は五感を頼りに、豆の声を聴き、表情を見て、対話を重ねる営み。そしてそれは、子どもの育ちととてもよく似ていた。
大切なのは、環境を整えることと、信じて任せること。植物のタネが自分のタイミングで発芽するように、子どもも珈琲豆も、もともと持っているチカラを発揮する瞬間がある。私たちはその芽吹きを信じ、見守るだけでいいのだと気づいた。
この気づきは、私の子育てにも、珈琲抽出と焙煎にも、暮らしにも深く根を張った。
そして焙煎をはじめたこと、NCRを使いはじめたことは私たちに「手と間」という考え方をもたらした。
自分の手を使い、
時間をかけ、
丁寧に向き合う。
「手と間」は
自分を大切にする
活動と時間。
暮らしの中に、1日の中に、その「手と間」をひとつ置くことで自分たちの暮らしを主体的に整える力になっていった。
家の前の無人販売所やイベントでの販売。家族とたくさんの方々と分かち合うことで、日常はさらに深まり、暮らしは豊かさを帯びていった。
そして気づいた。「豊かさ」とは、持つことでも、得ることでもなく、分かち合うことなのだと。
珈琲てんのきは、私たちのお店であり、私たちの“在り方”そのもの。
だから私たちは、かけがえのない日日を主体的に生きることで、分かち合いの種を蒔いていく。
私たちの在り方が、誰かの心にそっと触れ、ふっと肩の力が抜けるような、背中にやさしく手を当てる存在になれたら、その人が自分らしく生きる力を思い出すきっかけになれたら。
そんな願いを胸に、今日もゆっくりと焙煎しています。
◉所在地
193-0826
東京都八王子市元八王子町3-2750-843
【Google Maps】
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◉メディア掲載情報
私たちの仕事と暮らしのこと
ご覧いただけると嬉しいです
2024.9
中央線と暮らす◯◯ コーヒー編(2024秋)前編
珈琲てんのき「八王子(高尾)」
https://chuomarumaru.com/2024/10/10/post-4370/?fbclid=PAZXh0bgNhZW0CMTEAAaZVyRQXBL5-aKOL4uR0JOI0u9cK4dTVwndX_z7_1se4KFvgqf6Ms1HXDXQ_aem_uyH0-5ZY90blbfVw6_i9Kw%2523
2025.7
Neji Coffee Roaster / PEOPLE
家族と暮らす、を大事にするコーヒーの仕事。珈琲てんのき。
https://nejicoffeeroaster.com/people/457/
2025.9
八王子ジャーニー
高尾の無人販売所「珈琲てんのき」。“手と間”が香る癒やしのコーヒー体験
https://8dabe.com/2025/09/01/coffee_tennoki/
